vol.1
「ねぇ・・・類・・・高校生までのあたしは幸せだった・・・?」
「う〜ん・・・俺と麗奈が出会ったのは高校生の時だからなぁ〜・・・
でもきっと幸せだったと思うよ。あの頃の麗奈はすごく綺麗な笑顔で笑ってたから。」
「そう・・・でもあの頃はって今は綺麗じゃないってこと?!」
「プッ・・・今も綺麗だよ。」
「はいはい、もういいですよーだ。・・・さっ早く寝よ。」
彼女がこんなことを聞く時はきっと何かを求めている時・・・
それがなんだかわからないからきっと不安なんだ・・・
そういう時は必ず彼女の左の薬指の指輪にキスをするんだ
すると彼女は優しく微笑むから・・・
だけどあの頃の輝くような笑顔は失ってしまった・・・
誰のせいでもない・・・
だからこそ彼女は・・・俺は・・・あいつは・・・立ち上がれない・・・
「それじゃぁ俺は今日からNYに行ってくるから。」
「うん。いってらっしゃい。一緒にNYに行きたかったのになぁ。」
少しすねている彼女の頬にそっとキスをする。
「ごめん。会議ばっかできっと一緒にいてあげれないから。
また今度ゆっくりできる時に行こう。」
「うん。それじゃぁがんばってきてね。」
出張の時でも絶対に彼女を一緒に連れて行くけど、
今回は家で待っているように言った。
なぜなら今回の仕事はあいつとのプロジェクトだから・・・
彼女をあいつに会わせることはできない・・・
もうあいつに譲れるような感情じゃないんだ・・・
彼女はもう俺の大切なパートナーだから・・・
あたしは部屋に戻ると彼の大好きなテレビがつけっぱなしだった。
「もぉ〜テレビつけっば・・・・・」
あたしはテレビの画面に映っている男性から目が離せなくなった。
ねぇ・・・あなたは誰・・・?
あなたを見るとなぜだか涙が溢れるの・・・
あなたは誰・・・?
道明寺司・・・あなたはあたしの何かを知っているの・・・?
お願い教えて・・・
あたしの記憶を・・・
vol.2
つくしに見送られた後、俺はそのまま空港に向かう前に電話をした。
「もしもし、あきら?今日からNYだから麗奈のこと頼むね。」
「あぁわかってるって。桜子と滋が毎日のように行くって言ってたし。」
「サンキュ。だけどくれぐれも気をつけるように言ってね。
まだ麗奈は気付いてないけど、本能で何か自分の心の中にあるものを探してるから。」
「類・・・お前今幸せか?!・・・いや、悪い。変なこと聞いて。」
「・・・あぁ。それじゃぁよろしくね。」
俺は電話を切った後、遠くの空を眺めながら考えた。
俺は今幸せなのか・・・それは俺自身が聞きたい・・・
あの頃俺は彼女に恋をしてた。
だけど付き合いたいとかそういうのじゃなかった。
彼女のあの輝く笑顔が見えればそれでよかったんだ・・・
その笑顔が消えてしまったその時、俺は彼女の笑顔を取り戻したかった。
きっとその笑顔を取り戻せるのは1人しかいないのに、どうしても俺が取り戻したかった。
その日から俺の幸せは彼女の笑顔がよみがえること。
今幸せじゃないわけではない・・・
だって俺は彼女を心から愛してる。
彼女の笑顔がよみがえったら俺は自分から幸せだと言えるんだろう。
だけどその時彼女を手放しはしない。
彼女がいなくなれば俺はもう生きている意味がなくなるんだ。
それほど彼女に溺れてる・・・
いや、強欲になってしまったのかもしれない・・・彼女を愛するあまり・・・
vol.3
「司さん、お久しぶりね。日本での仕事はどう?順調かしら。」
「・・・あぁ。で、今日はなんなんだよ。」
するとババアは俺の前に書類を出した。
「そろそろ結婚したらどうかしら。結婚してバックを固めれば経営者として完璧だと思うわよ。」
俺はすぐにその書類を手でどけた。
床に散らばる書類。
まるで俺のバラバラになった記憶のようだ・・・
そう思うと無性にイラつく。
「いい加減にしろよ!!見合いなんてしないって言ってんだろ!!」
「・・・だったら他にそういう方がいるの?」
「いねぇよ!!女なんかどーでもいい!!
ちゃんと仕事してんだからいいだろ!!俺にかまうな!!」
ババアは床に落ちた見合い写真を拾いながら呟いた。
「あなたが求めてるものはもうあなたの側にはないのよ。
それでも探し続けるの?・・・後悔するのはあなた自身よ。」
それだけ言うと部屋を出て行った。
俺は側にあった花瓶をババアが出てったドアにめがけて投げつける。
割れた花瓶の破片もが俺の記憶を表す・・・
くそっ・・・なんなんだよ・・・
俺を呼ぶ声は聞こえるのにそれが誰だかわからねぇ。
お前は誰なんだよ・・・
俺の中にいるお前は何を知ってるんだよ。
そんなに俺を苦しめたいか・・・
お願いだ・・・
俺を救ってくれないなら・・・俺の中から消えてくれ・・・
NOVEL