vol.13
会社に着いてから、類の部屋に通してもらうのに苦戦した。
ほとんど会社になんか来たことがないから一般社員にはあたしなんて部外者同然。
とりあえず受付のお姉さんに類に連絡とってもらえばわかるからと言っても、
アポがないと取り次いでくれないみたい。
類の身内ですと言っても信じてくれない。
もうなんなのよぉ〜〜〜〜!!!
あたしがどんどん怪しい目で見られて警備員の人まで呼ばれそうになった時、
類の秘書である安藤さんが助けてくれた。
「麗奈様!!どうしてこんな所に?!!」
重役秘書があたしのことを丁重に扱う姿を見た周りの人達は、
やっと信じてくれたみたいでさっきと扱いが180度かわる。
「先ほどは申し訳ございませんでした!!類様は只今外出中でございます!」
「外出中かぁ〜・・・ってじゃぁどうして安藤さんはいるの?」
すると安藤さんはバツが悪そうに言う。
「急に出て行ってしまわれて、どこに行かれたかわからないんです・・・」
類ったら周りの人に迷惑かけて!!
帰ってきたら説教してやる!!
「いつも迷惑かけてすみません。とりあえず類の部屋に案内してくれますか?
類が帰ってきても私がここにいることは言わないでくださいね。」
「はっはい・・・」
安藤さんは困惑した表情をうかべながら類の部屋を案内してくれた。
「この先を右に曲がった奥の部屋です。私は今から類様を探してきますので、ここで失礼いたします。
あっですがもうお部屋には道明寺様が・・・」
あたしは安藤さんの言葉を最後まで聞かずにいたずらをする子供の気分で部屋の前まで行った。
とりあえずノックをしてドアノブに手をかけようとしたら勝手にドアが勢い良く開いた。
あれ?!自動ドア?!
そんなアホな事を考えてたら勢い良くドアが開いたせいで前に倒れそうになった。
だが倒れるかと思ったら何かにぶつかった。
「類!!てめぇどこ行って・・・」
その時怒鳴り声と共になんだか懐かしい香水の香りにつつまれ、なぜだか安心した。
vol.14
なんなんだろう・・・この変な気持ち・・・
類と一緒にいる時とはちょっと違う安心感
あたしの知らないところで何かが動き出してる・・・?!
「おい、いつまでくっついてるつもりなんだよ?!」
少しでもこの安心感を味わっていたいと本能的に考えていたらしく、
誰かにしがみついていることなど忘れていた。
「ぎゃぁ!!ごめんなさい!!!」
慌てて離れ、この人物は誰なのか恐る恐る顔を上げると・・・
「あっ!!」
かなり大きな声で叫んだので向こうはびっくりしていたが、なんだか顔が赤かった。
道明寺司だ!!
こんなに間近で見たのは初めてなはずなのに、なんだか懐かしい。
「初めまして、類の妻の麗奈です。」
初めましてという言葉に違和感を感じながら挨拶をした。
「・・・道明寺司です。」
彼に初めましてと言われなくてホッとする自分がいた。
やっぱりおかしいよ・・・
彼の言葉に彼の香りにそして彼自身に反応する自分がいる。
でもあたしはこの人を何も知らない。
知るはずがないのよ。
その後話が続かなくて沈黙になると彼が突然口を開いた。
「・・・類とはどうやって知り合ったんだよ?」
急に類とのことを聞かれて動揺する麗奈。
「えっ?!あっえっと・・・気付いた時・・・ですかね。」
彼は私が言ってることの意味が分からないというような顔をする。
これは彼に言っていいのだろうか・・・。
だけど言わなくちゃいけないような気がする。
ううん、彼にあたしを知ってほしいと思ったの。
その感情こそがあたしの心の奥底に眠っていた気持ちの鍵だった。
vol.15
家に着くとすぐにリビングへむかった。
だが麗奈の姿はなく、寝室にでもいるのかとそっちへ向かったが姿が見えない。
外出でもしてるのかと思ったが、情緒不安定な時の麗奈は家に引きこもりがちなはず。
しかたがなく使用人を呼んで、麗奈の居場所を聞くと会社にむかったと言う。
俺はそれを聞いた瞬間全身が冷えきったような感覚になった。
今会社へ行けばあいつがいるはず。
麗奈は俺の部屋へ行くに決まってる。
そうなればあの2人が会う事は必然。
今すぐに戻らなければ・・・いやもう遅い。
もうすでにあの2人は出会ったはず。
それはもうかえることのできないこと。
この後の対処を考えなければ・・・
俺はすぐに秘書の安藤に電話をかけた。
「類様?!!今どこにいらっしゃるんですか?!もう道明寺様がお待ちになってて・・・」
「わかってる。それより麗奈が来てるよね?!電話かわって。」
「えぇ?!麗奈様ですか?!いや、あの・・・」
なんだか安藤はどう答えていいかわからない様子だった。
「麗奈に口止めされてるんでしょ?!いいから麗奈を出して。」
かなり強い口調で言ったため、安藤は少しびっくりしながらも麗奈の所へ行ったらしい。
こうなったら麗奈の気持ちは俺にあることを司にわからせる。
いくらあの2人が出会ってももう遅い。
麗奈の不安を埋めてきたのは俺。
司、お前じゃないんだよ。
麗奈の全てを得たのはこの俺なんだ。
NOVEL