お帰りのキスを




「・・・ねぇ・・・いい加減離れてくれない?!」


「・・・なんで?気にしずにやれよ。」


「・・・あのねぇ!!気になるに決まってんでしょ!!

 くっつかれてたら料理できないじゃない!!」



え〜っと、今のこの状況を簡単に説明しますと、今あたしは夕食の準備をしてるんだけど、


早く帰ってきた司が後ろから抱きついて離れません・・・。




「ちょっといい加減離れて!!!」


思いっきり睨みつけるとちょっとすねた顔になった。



「じゃぁキスしようぜ。お帰りのキス。」


そう言うと顔が近づいて来たのでとっさに唇をガード。



「さっきしたじゃん!!近寄るなぁ〜変態!!!」


その言葉に青筋を浮かべる司。



が、いつもなら怒るはずなのになぜかニヤニヤしだす。



なんか変だよ!!って言ってもまぁ2週間ぐらい前からずっとこんなんだけどね・・・




2週間前にあたし達は結婚したばかり。


いわゆる新婚なんです。



だからかわかんないけど、最近ずっと早く帰ってきて、


帰って来てからはぴったりくっついて離れない。



本人いわく新婚生活とはこういうものらしい・・・。


世間のみなさま・・・本当にこういうものでしょうか?!






「で、何作ってんだ?」



ずっとくっついてたんだから何作ってるかぐらいわかろうよ。



「焼きそば!あんた知ってる?!」


「知るわけねぇだろ。うまいのか?」


「食べたらわかる!!だからあっち行ってて!!」




そう言うとブツブツ文句を言って拗ねながらソファーのほうへ行った。



まったく困ったもんです。


もうちょっとでできるんだから静かにしててよね。


・・・・・・・・!!!!






「あぁーーーーーーー!!!!」




あたしが急に大きな声を出したので、司がびっくりして慌てながらこっちへ来た。



「どうした?!指切ったのか?!見せてみろ!!」



司があたしの手を取って切れてるかも見ずに指をなめた。



「ぎゃーーー!!!ちょっと何やってんのよぉ!!切れてないわよ!!!」



あたしは顔を真っ赤にさせて手をひっこめた。



「じゃぁなんだよ。急にでかい声出すんじゃねぇよ。」



「紅ショウガを買うの忘れちゃったのよ。司買って来て!!」



するとかなり嫌そうな顔をする。



「別にそんなもんなくても食えるんだろ?!」



「あんた何にもわかってない!!焼きそばには絶対紅ショウガじゃないとダメなの!!」



「俺は絶対買いに行かねぇぞ。」



「味覚の合わない夫婦はうまくいかないのよ!」



「別に俺はそれが嫌いとか言ってねぇだろ。それがなくてもいいっつってんの。」




両者一歩も譲らず・・・





このままじゃ紅ショウガのない焼きそばになっちゃう!!


そんなの焼きそばじゃなーーーい!!!



こうなったらあの手しかないわ・・・



「司・・・お願い・・・」



こういう時はやっぱり上目遣い!!




「おまっ・・・きたねぇー・・・」




「いってらっしゃ〜い!!」



見事、つくしの勝利。




これで本当の焼きそばになる!よかったぁ〜!!



でも紅ショウガってわかるかな?



それに高級スーパーに行ってたらどうしよう・・・



まぁそこまで司もバカじゃないか。



まったく、これからどんどん庶民の味を教えていかなくちゃ!!









30分ぐらいたった頃、玄関のドアが開く音がした。



あっ帰ってきた!!!



が、部屋に入ってくる気配がない。



つくしは不思議に思って玄関のほうへ行くと、司は玄関の所で立ったまま。



「司?そんなとこに立ったまんまでどうしたの?」


するとなにか不服そうに唇を尖らせる司。



「・・・キス。」


「は?」


「お帰りのキス。俺がこのショウガとやらをわざわざ買ってきてやったんだぞ。」



そう言ってあたしの前に袋を差し出す。



司とスーパーの袋って・・・プププっっっ・・・



袋の中身を見ると・・・




「なにこれーーーー!!!!」



「あ?ショウガってゆうもんだろ。」



「ショウガ・・・ショウガには違いないけど、あたしが言ってたのは紅ショウガ!!」



なんと袋の中に入ってたのは、紅ショウガではなく生ショウガ。




あたしにこれを擦って焼きそばにかけろと・・・?!




「もうあんたホントバカじゃん!!なんでそういうおしいとこで間違えるのよ!!」



「お前なぁ〜この俺がこんなよくわかんねぇものを買いにいったんだぞ!

 それもお前がどうしてもほしいっていうから・・・少しぐらい感謝されてもいいだろ?!」





そっか・・・1人でお使いとかそういうのしたことないんだもんね。


ましてや紅ショウガなんてわかるわけないか・・・



「ごめん、言い過ぎた。買いに行ってくれてありがとう。」



だけどまだそっぽを向いてる司。



「ねぇ・・・あやまってるんだからもう機嫌直してよ。」




「・・・お帰りのキス。」



こいつ・・・そこまでキスにこだわるなよ。


やっぱりキスしなきゃ機嫌直んないか・・・



あたしは背伸びをして軽くキスをした。



「お帰り、司。ショウガ・・・買って来てくれてありがとう。」



やっと機嫌が直った司はあたしの手を取って部屋に入る。




結婚してよかったこと・・・それは司と一緒にいれること。


朝一番に司の顔が見れること。


同じものを見て、同じことを感じて、同じ時間を共有できること。


あと・・・お帰りのキスをしてあげれること。




まだまだたくさんあるけれど、やっぱり司と一緒にいることがあたしにとっては一番幸せだから。



新婚生活が終わるとラブラブじゃなくなるってよく言うけど、


あたし達はずーっとラブラブでいようね。



あたしはずーっとお帰りのキスをしてあげるから。







「・・・ねぇ・・・いい加減離れてくれない?!ご飯食べれないんだけど・・・」




〜Fin〜






あとがき。

おバカな司くん・・・笑”
キリ番を踏んで下さった毬藻様のリクエストは「新婚甘甘生活」でしたので、
こんなものになってしまったんですが。。。大丈夫でしょうか?!汗”
これは甘甘じゃなくてギャグに近い気がしますが。。。笑”(==’
ちなみに焼きそばに紅ショウガ。。。私はそんなにこだわってないんですが、
うちのおばあさまが紅ショウガにこだわってる人なので参考にさせていただきました。笑”
毬藻様、キリ番30000番を踏んで下さってありがとうございました!!m(_ _)m





NOVEL