シャイな彼氏




司がNYから帰ってきて数ヶ月。
あたしたちは何とか魔女に認められて、まぁ恋人らしいデートも数回。

あたしはまだ大学生だけど、あいつは東京支社を任されて、
あっちこっちに飛び回っている。

だからデートのドタキャンなんてめずらしくもなんともない。
だからこそ会ってる時間はとても大切で幸せな時間。
けれど会えない時間だって、昔あいつにもらった土星のネックレスがあれば
一緒にいるような気がする。

NYに行ってから肌身離さず持っている土星のネックレス。

あいつは毎回あたしがそれをつけているのを見て
すごくうれしそうに笑うから、これはあたしにとってすごく大切なモノ。

だからなくしてしまうなんてありえないのに・・・・


ない!ない!!ない!!!


昨日司の家に泊まって帰ってきてからどうしても見つからない!
タマさんに電話して、掃除した時に何かあたしのものがなかったか聞いてみたけれど、
何もないって言われた。
狭い自分の家の中で、カバンの中身を全部出したけれどそこにもない。


司の家に行った時にはたしかにしていたはずなのに・・・・

道で落としちゃったのかなぁ・・・どうしよう!!

来週司と会う約束をしているのに・・・・

なんとしてでも見つけなくちゃ!!!




そして1週間。どんだけ探しても見つからない。
あれだけ高価なモノだから、もしかしたら拾った人が持って行ってしまったのかもしれない。

今からデートなのに、ネックレスをしていないあたしを見て、
あいつが落ち込む顔なんて見たくない。

あたしは携帯を手に取ってあいつに電話をした。
3コールであいつの優しい声が聞こえる。

「どうした?」

「あっ今日なんだけど、ちょっとカゼをひいて行けなくなっちゃったの。ごめんね。」

すると、とても心配そうな声になる。


「お前大丈夫なのか?!医者呼ぶか?!」

あぁ・・・・ウソなのにこんなに心配してくれてすごい罪悪感。


「ううん、寝てればすぐよくなるから。」

「そうか、無理すんなよ!何かあったらすぐ電話しろよ、なっ!」

「うん、ありがとう。それじゃぁまたね。」


もうあたし最低。なんでウソついてんのよ・・・・

逆にあいつに心配させちゃったじゃない・・・・

だけど土星のネックレスをなくしたなんて言えない。
あれはあいつがいない間の代わりみたいなモノだったから、
あいつまでなくしそうで恐いんだもん。

あれに代わるものなんてないのよ。

お願いだからもどってきて。







ベッドの上にへたりこんで泣いていると、チャイムが鳴った。
慌てて涙を拭いて、ドアを開けるとそこには・・・


「お前大丈夫か?!って何泣いてんだよ!やっぱ苦しいんか?!」

「・・・なんで?」

「なんでって、電話切る時お前泣きそうな声してたから、苦しいのかと思って
急いで来たんじゃねーか。」


なんでそんなに優しいのよ・・・・ますますなくした事言えないじゃない・・・


司はおでことおでこをくっつけて熱があるか調べる。


「う〜ん・・・熱はないみたいだけどよ。よしっ俺ん家行くぞ。
うちならタマもいるから安心だ!」


えぇ?!何言い出すのよ、こいつ!


「いいわよ、寝てれば大丈夫って言ってるでしょ?!ってきゃぁっ!!」


司はごちゃごちゃ言うつくしを無視して抱き上げると、そのまま車にのせて
道明寺邸へ向かった。







気がつくとあたしはフカフカのキングサイズのベッドで寝ていた。

え〜っと、デートをキャンセルして、そしたら司が来て連れて行かれて・・・

そうか、ここは司ん家か・・・っておい!

「起きたか。どうだ、具合?」


テラスでノートパソコンをひろげて仕事をしていた司は、
つくしが起きたのに気付き、つくしのほうへ行き、ベッドの端に腰をおろした。

「ごめん。」

もう隠しておくことはできない。これ以上ウソをつくのもイヤだから。


「何言ってんだよ。今頃お前とデートしてるんだしよ。気にすんな。」

「そうじゃないの。あたし本当はカゼなんてひいてない。
今日は会いたくなくてウソついたの。」


すると、あいつの顔がみるみる険しくなる。


「どういうことだよ。」

「あたし・・・なくしちゃったの・・・土星のネックレス。
すっごく大事にしてたのに、司に初めてもらったプレゼントなのに。
どんなに探しても見つからなくて、あんたはあたしが
あれをつけてるのを見ると、すごく嬉しそうにしてたから、
落ち込んだ顔を見たくなくてウソついたの。
本当にごめんなさい。
あれは2人にとってはとても大切なモノだったのに・・・・。」


あたしが俯いてしゃべっていると、急に司が立ち上がって
引き出しの中から何かを取り出すと、またもどってきた。


「手ぇ出してみろ。」


絶対に怒鳴られると思っていたのに司はいたって普通なので、
まぬけな顔をしていると、手を引っ張られて、
手のひらに何か金属の冷たいものがふれた。

この感触・・・そっと手のひらの上のものを見ると、
そこには土星のネックレス・・・と、指輪。

どういうことかわからないという顔をしていると、
司がちょっと照れたような顔をして話し出した。


「そりゃぁ探しても見つからねぇはずだわ。この前お前が泊まってった日に
ちょっと拝借したからよ。本当は今日、もっとロマンチックな場所で
渡すつもりだったんだけど。
・・・プロポーズするのにどーしたらいいか悩んでさ、
すっげー恥ずかしいじゃん。だからこのネックレスを
忘れてったぞっていうふうにして、
一緒に指輪も渡そうとしたんだよ。」


・・・あんた、あたしがどれだけ悩んだと思ってんのよ・・・
ふつー指輪は指輪でちゃんと渡すもんでしょーが。
まぁあんたは普通じゃないけどさぁ・・・
はぁ、もうなによ。一気に気が抜けたじゃない。


司はつくしにネックレスと指輪をはめて、すごく優しく微笑んだ。

「つくし、結婚して。お前とずっと一緒にいてぇんだよ。
オレにはお前が一番大切だから。」


そっと左手の薬指にキスをして抱き寄せる司。


・・・そんな素直に返事はしないわよ。
この1週間あたしを悩ませたバツなんだから。


「あたしの一番大切なモノを二度と取らないって約束したら考えてあげる。」

すると、司は意地悪そうに口元を上げて笑う。

「よく言うぜ。お前の一番大切なモノはオレ様だろ。」


・・・くやしい・・・なんでそういうとこだけ鋭いのよ。
でもちょっと間違ってるわね。


土星のネックレスはやっぱり一番大切なモノよ。
あっこの指輪も一番大切なモノだわ。
あなたにもらうものはすべて一番大切なモノになる。


だけど、司は一番大切な人なんだから。
一番大切な人はあなた一人だけ。

世界で一番愛してる、あたしのすぐ未来のダンナ様。



〜Fin〜



あとがき

う〜む・・・やっぱり小説を書くのは3月になってからにしようかしら。汗”
時間がないと思って焦って書いてしまうので、最後のほうなんて
なげやりに近い・・・爆”でも忙しさのせいにしてはいけませんね。
あぁ・・・妄想は常にしてるのに、こういう時になると
全然働かない・・・役立たず!!(><’ あーなんかホントすみません。でも温かいお言葉をいただけたら
うれしいでございます〜〜〜〜(><’