vol.34
翌朝、目が覚めると目の前には司の整った顔があった。
寝起きのせいでボーっとしていたが、自分が何も身にまとってないことに気付き、
やっと昨日の事を思い出した。
そっか、あの後結局・・・一人で思い出して、1人で照れるつくし。
時計を見て時間を確認すると、自分の身体に巻きついている司の腕をそっとはずしバスルームへむかった。
が、すぐに寝室に戻って来て司を起こそうとしていた。
「司?!ねぇ起きて!!なんかすごいたくさんあるんだけど!!」
なかなか起きないのでおもいっきり方を揺さぶるとやっと起きた。
だがその顔は不機嫌そのもの。
「お前・・・もうちょっとちがう起こし方があるだろうが。」
「だって起きないんだもん!そんなことよりリビングのものはいったいなに?!」
「・・・あぁ誕生日プレゼント。」
・・・はぁ〜〜〜〜・・・ありえない。
いったい何年分あると思ってるのよ・・・
「あっ!!!」
つくしがあきれていると急に大きな声を出す司。
そして急にベッドから起き上がるので慌てて目を背ける。
司はバスローブを羽織り、脱ぎ捨ててあったズボンから何かを取り出すとつくしをベッドに座らせた。
「ホントは昨日渡すつもりだったんだけどよ・・・」
そう言ってつくしの前に差し出したものは指輪だった。
「これって・・・」
「ん・・・まぁ俺のモノってことで。」
「でもまだ・・・」
ちょっと戸惑っているつくしにほんの少し傷ついたが、つくしの右手をとり、その薬指に指輪をはめた。
「別にこれは婚約指輪とかじゃねぇよ。婚約指輪と結婚指輪はもっとすげーのをやる。
これは男除けだ。それに右手だし、別に『望月瑠璃』に男がいたってかまわねぇだろ。
これだったら仕事でしててもなんの問題もねぇし。お前は俺のもんだ。誰にも渡さない。」
指輪がはまっている右手をかざしてみてみる。
『forever mind』と彫られたプラチナの指輪。
forever mind〜永遠に俺のもの〜
この指輪が私は司の一部だと言ってるみたいでうれしい・・・
「ありがとう。大切にするね!」
とびっきりの笑顔を見せ、司の唇に軽くキスをした。
すぐ離れようとしたが、司が離さないといわんばかりに追ってくる。
そのまま流されそうになったが、つくしのアッパーが見事に決まる。
「朝っぱらから何考えてんのよぉ!!あたしは初出勤なんだから!!!」
真っ赤な顔をしながら寝室を出てったつくしを見て、青筋を何本もたてる司だった。
vol.35
「社長、宮川様がいらっしゃいました。」
「そう、お通しして。」
司から贈られたグレーのスーツを着て、今あたしは魔女の部屋の前に立ってる。
このフロアはすごい重い空気が漂っている。
でもあたしはやらなくちゃいけない!
司が今まで一人でがんばってきたんだもん。
あたしにだってできることはある!!
気合いを入れなおしていると、中から西田さんが出てきて入るよう言われた。
中に入ると魔女がデスクに向かって書類に目を通していた。
あたしが入ってきたのに気付くと、その書類を置いてデスクの前に来るよう言った。
「あまり時間がないので手早くすませるわ。
宮川つくし・・・いえ、望月瑠璃さん。今日から司の秘書をしてもらいます。
あなたのことを知っているのは司の第1秘書である村上だけです。
彼には他の重役の秘書もしてもらうので、わからないことは彼に聞くか、
西田に聞いてちょうだい。そして毎週あなたには私から課題を出します。
それを1週間以内にレポート用紙にまとめて西田に提出してください。
まぁそんなところかしら。・・・あなたは確かに道明寺家にふさわしい家柄です。
けれど司をいろいろな面で支えていけなければ道明寺家に迎えることはできません。
これからあなたの力を試させてもらいます。手加減は一切しませんのでそのつもりで。
話は以上です。下に車を用紙させてあるから、それで社へ向かいなさい。」
これからあたしは試される・・・
まだ結婚とかそういうのはわからないけど、ずっと司と一緒にいたい。
そのための試練なら何がなんでも乗り越えてみせる。
再び固い決意をした目で魔女を見てからその場を後にした。
「あのまっすぐな瞳も全然かわらないわね・・・。
昔はあの瞳が憎らしく、時には恐ろしくもあったわ。」
楓はつくしが去って行ったドアをしばらく見つめた後、再び『鉄の女』としての表情に戻った。
vol.36
道明寺日本支社に着くと、ロビーで司の第1秘書である村上が待っていた。
彼はあたしとは8歳年上の28歳で、司よりやや低いが長身、
ルックスもなかなか、学歴優秀、司が仕事を始めた時からの秘書であった。
「望月さん、秘書室は重役フロアにありますので、重役専用エレベーターを使ってください。
そしてこれは司様のスケジュールです。今日のは私が調整しましたが、
明日からは望月さんが行って下さい。後の事は随時説明しますので。ここが秘書室です。」
秘書室に入ると7人ぐらいの人達が忙しそうに働いていた。
8:2で女の人のほうが多いかな。
秘書の人達があたしに気付くと、
『あの子が司様の秘書じゃない?!』
『うそ〜ライバルまた増えるじゃない。誰よ、男の人って言ってたの。』
などと囁き合っている。
とりあえず聞かなかったことにして、秘書室長に挨拶をした。
「今日から司・・・様の秘書をさせていただきます、望月瑠璃です。よろしくお願いします。」
「あぁ君か。楓様から聞いてるよ。大変だろうが、なるべく早く仕事覚えてがんばるようにね。
私は秘書室長の仲本だよ。」
仲本室長はちょっと小太りでとても温和な感じの人。
仕事ができる牧野家のパパって感じ・・・ではないな。
改めて仲本室長から秘書の人達に紹介されている時に、司が現れた。
秘書室は病院のナースステーションのようにオープンで、
人の出入りがチェックできるようになっている。
秘書達は皆起立し、挨拶をした。
すると仲本室長は司を呼び止め、私を紹介した。
「司様おはようございます。こっちは本日より司様の秘書を勤める望月です。さぁ挨拶をして。」
室長に促されるように一歩前に出て司を見る。
朝見た顔とは違う顔。
なんか別人みたいでちょっと寂しい・・・
「俺の顔になんか付いてるか?」
あたしが司の顔を見つめたまま何もしゃべらないので司がしゃべりかけてきた。
「えっあっいいえ。すいません。今日から秘書となりました望月瑠璃です。よろしくお願いします。」
「あぁ、がんばってくれ。それじゃぁこの後の会議の資料とスケジュールを部屋まで持ってきてくれ。」
それだけ言うと司は行ってしまった。
結構普通にできるもんね!!
よっし!!!がんばるぞぉ〜〜〜!!!
NOVEL