vol.40
「てめぇは誰の許可を得てこいつに手ぇ出してんだ?!」
会議室のドアのところからすごく低いドスのきいた声。
神野さんもびっくりしてそちらを見ると、ドアにもたれ腕を組みながらこっちを睨みつけている司の姿。
あの目は本気で怒ってる時の目。
「俺の女に手を出すなんていい度胸してるじゃねぇか。あぁ?!とっととうせろ。」
すごくおびえながら神野さんは会議室を出て行った。
「・・・帰るぞ。」
それだけ言うと司も行ってしまった。
・・・いやいや、ちょっと待ってよ?!
さっきすんごいことを神野さんに言っちゃった気がするんだけど?!!
その後、やはり車の中でも何も喋らない司。
つくしもどう声をかけてよいかわからずそのまま道明寺邸に着いた。
いつもなら司だけが降りてそこで別れるはずだが、今日は無理矢理一緒に降ろされた。
連れて行かれたのは司の部屋。
そして部屋に入るとすぐに唇を奪われた。
「男と仲良くすんなっつっただろうが。どーゆーことだよ?!」
体を壁に押さえつけられて、至近距離で睨まれる。
蛇に睨まれたカエルの気持ちがよくわかるわ・・・。
うぅ・・・やっぱりあたしが悪いのね・・・。
「社内では『噂の2人』らしいじゃねーか。
あいつの告白にあんな顔して、お前あいつのこと好きなのかよ?!」
何言い出すのよ、こいつ!!
なんでそうなるのよっっっ!!!
「ちょっと!!あたしのこと疑ってんの?!信じてないわけ?!」
「じゃぁなんで相手が誤解するような態度とってんだよ?!」
「別にそんな態度とってない!!誰に対しても一緒だもん!!
それに本当に神野さんの気持ち知らなかったし!!!」
ダメだ・・・怒り通り越して悲しくなってきた・・・。
目に涙をためながらも睨み返す。
「その鈍感をどーにかしろ!!!おまっ・・・泣くなんて卑怯だぞ!」
「泣いてなんかない!!誰があんたのために泣くか!!!」
泣きたくないのに意志とは関係なく流れる涙。
司はつくしの涙には弱く、ちょっと困った顔になった。
「俺以外の男に抱きしめられて、お前のあんな照れた顔を見られるのは嫌なんだよ!!
あそこに俺がいなかったら絶対あのままキスされてたしよぉ。
わかってんのかよ?!・・・あーもういい。」
つくしが何もしゃべろうとしないのでそのまま部屋を出て行こうとすると、
つくしの小さな手がスーツの袖をつかんだ。
「ごめんなさい・・・でも本当に気付かなくて、告白されてすごくびっくりした。
だからといって神野さんのこと好きとかじゃないし、キスされそうになったのもイヤだった。
助けてくれてありがとう。」
涙で潤んだ瞳で俺を見上げるお前はホントにわかってんのか?!
そーゆー仕草一つ一つが男を魅了してんだぞ?!
だけどその瞳に易々と落ちるのはくやしくて意地悪を言ってみる。
「じゃぁ詫びとして俺の言う事何でもきけよ。」
vol.41
案の定、つくしはイヤそうな顔をする。
「なんでそういうことになるのよ?!・・・じゃぁ言う事聞いたら神野さんに何もしない?!」
くそっこいつこういうことだけは鋭い。
けどそこは彼氏としてのプライドがあるから譲れねぇ。
「それは無理だ。自分の女が犯されそうになって黙ってられるほど俺はいい奴じゃねぇよ。
まぁ地方に飛ばして二度と俺らの前にあらわれないようにしてやる!」
「ちょっと!別に犯されそうになんかなってない!!」
「はっ?!バカかお前。キスしたらそれ以上を考えない奴なんていねぇよ。」
「バカはあんたよ!そんなのあんただけよ!変態!!」
「てめぇこのやろう・・・男なんてみんな同じだ!んな少女マンガみたいな奴いるか!!」
くそぅ・・・話がすごくそれてるよ・・・
でも神野さんが地方に飛ばされることは阻止しなきゃ!!
「わかったわかった。司の言う事は何でも聞く。
何でも聞くから神野さんには何もしないで。ねっお願い!!」
こうなったら上目遣いで頼むしかないわ!!!
するとだんだん司の顔が赤くなってきた。
よしっ!!もう一押しだわ!!!
「ねぇ司・・・」
「あ〜〜もうわかったよ!お前マジずりーよ!
ったく・・・ちゃんと俺の言う事何でも聞くんだろうな?!」
すっごく不満そうだけど、いちお約束してくれたから、
「もちろん!ありがとう!!」
と言って、首に抱きついた。
が、すぐに後悔。
1年の海外生活で人とのハグなんてほとんど挨拶程度のものとして慣れてたけど、こいつには通じないわ。
一瞬驚いた司だったが、もうすでにつくしを抱きかかえ首筋にキスをしながらベッドへ向かっている。
「えぇ?!ちょっと意味わかんない!!なんでこうなるのよぉ〜〜!!!」
つくしの抵抗もむなしく、その日は朝まで司の相手だった・・・。
vol.42
そういうわけで、あたしは司の言う事を聞く事になった。
しかも1つじゃないのよ。
普通こういうのって1つだと思うんだけど、あいつはワガママすぎる!!
なんでいくつもあるのよ!!
まずは週に最低1回は道明寺邸に泊まりにくること。
・・・これは今までも強制的だった気が・・・。
次に男の人には仕事以外で近づかないこと。
これは無理に等しいと思うんだけど。
プライベートではないにしても、エレベーターとかでどーすんのよ?!
不可抗力じゃない!!!
他にもいろんな事言われたけど、バカバカしくて聞き流したわ!!
それよりも最後の一つが困ってるのよ。
それは道明寺司のバースデーパーティーにパートナーをつとめること。
そりゃぁあたしの時は花沢類だったから、今度のパートナーは司ってのは別になんの問題もないけど、
司が主役のパーティーとなると話は別よ。
でも司が言うにはお父様も承諾してるという。
だけどこれは心配・・・
だってあの秘書室のお局様たちも来るかもしれないのにぃ〜〜!!!
「先輩、電話中に独り言ブツブツ言わないでください。
それより聖さんも出席されますよね?!パートナーって誰だかわかります?」
あっ桜子と電話中ってことすっかり忘れてた。
ていうかなぜか桜子の声が恋する乙女って感じなのは気のせい?!
・・・まぁいいか。
「う〜ん・・・一人で出席か秘書と一緒じゃない?!
聖はパーティーとか好きじゃないからなぁ。でもどうして?」
・・・あれっ?!・・・ツーツーツー・・・って切れてるし!!!
なんだったのよ、いったい!!!
NOVEL