vol.43
「聖様、明後日の道明寺司様のパーティーに出席されるのですか?」
俺の第1秘書である北澤がたずねてきた。
「・・・いや、欠席する。つくしが出るんだから宮川としてはいいだろう。会長は?」
「会長も出席されるそうです。」
やっぱりな・・・。
この1ヶ月見ていたけど、会長は道明寺司を評価している。
だからこのまま道明寺司が何か大きなプロジェクトを成功させれば、つくしとあいつは・・・
だけど俺はそんなことを許すことはできない。
あいつのせいで今までつくしは苦しんだ。
たとえつくしがあいつを望んでいても、
これまでのことを考えればあいつにつくしを幸せにする資格なんてない。
俺はつくしを取り戻してみせる。
「聖様、三条様からお電話ですが。」
・・・三条桜子か・・・
「つないでくれ。」
「もしもし三条桜子です。お仕事中申し訳ございません。
どうしてもお頼みしたいことがありましたので、お電話させていただきました。」
「かまいませんよ。で、頼みというのは?」
「明後日の道明寺さんのパーティーに、パートナーとして一緒に出席していただきたいのですが。」
「そのことでしたら・・・」
ちょうどその時北澤が1枚のメモを渡してきた。
それには会長からの伝言。
・・・道明寺司のパーティーに出席しろ・・・だと?!
くそっ・・・会長は何を考えてるんだ?!
「聖さん?どうかされました?!」
「・・・いえ。私でよければかまいませんよ。」
「ホントですか?!ありがとうございます!」
「では7時頃に迎えにうかがいますので。それでは失礼します。」
電話を切った後、煙草に火をつける。
「・・・北澤・・・好きな女はいるか?」
聖の突然の問いかけにとまどう北澤だが、
「・・・います。私の学生時代から交際していますが、なかなか結婚に踏み切れなくて・・・
けれど彼女を手放すことはできないんですよね・・・ってすみません、こんなこと・・・」
「・・・いや、気にするな。今日はもう帰っていいぞ。その人も待ってるんだろ。」
「ありがとうございます。」
学生時代か・・・その頃お前に会っていたら、今頃俺たちは違う関係になれたのだろうか・・・
きっと俺は今と同じようにお前を愛するだろうな・・・
お前は・・・俺を愛してくれるか・・・?
あいつへの想いを俺にむけてくれるか・・・?
vol.44
「好きな音楽のジャンルは?」
「ん〜・・・ジャズ?!かなぁ〜・・・」
「んもう!!なんでそんなに曖昧なんですか?!」
「だってそんなの兄妹だからって知ってるとは限らないじゃない。
それよりなんでそんなに聖のこと聞くの?!」
あの後再び桜子から電話があって、夜にF3と滋さんと桜子がうちに来るとだけ言って、また電話が切れた。
ホント勝手なんだから!!
それで来たと思ったら桜子からの質問攻め。
しかもすべて聖について。
「先輩ってホント鈍感。まぁ今回はその鈍感に助けられてますけどね。
そんなことはおいといて、もっと聖さんについて教えて下さい!!」
あたしはもう勘弁して下さいという顔をしていると、チャイムが鳴った。
「・・・またか・・・」
ため息を一つつくと玄関へむかう。
ブツブツと独り言を言いながら少し小走りで部屋を出て行ったつくしを見てみんな笑い出す。
「主人のところにむかう犬みてぇ。」
「つくしかわいい!!なんだかんだ言っても後ろ姿はうれしそうだもんね。」
「先輩は私とちがって素直じゃないですからね。」
「お前も相当ひねくれてるけどな。そういえば類は?」
ふと類がいないことに気付いたあきらはきょろきょろと周りを見渡してみるがどこにもいない。
すると、別の部屋から怒鳴り声が聞こえてきた。
「類!!!てめぇこんなとこで何してやがる!!!」
その声にびっくりしたみんなは見に行くと、その部屋は寝室で、そこにはつくしと司と類がいた。
類は司が来たときには一緒に寝ているであろうつくしのベッドに寝ていて、
司はそんな類をひきずり降ろそうと必死で、つくしはあたふたしていた。
「類・・・お前何やってんの・・・?!」
あきらは答えはわかっているがあえて聞いた。
「だって眠かったんだもん。」
やっぱり・・・とあきれる。
類の言葉に当然怒る司。
「だったら他の部屋で寝ればいいだろ!!!」
「だってあんまり使ってないベッドよりこっちのほうがスプリングがちょうどいいんだもん。
それに牧野のにおいもするし。」
その言葉に真っ赤になるつくしに対して司はさらに怒りだす。
「てめぇつくしのにおいをかぐな!!かいでいいのは俺だけだ!!
それにこの枕も俺のだ!!使うんじゃねぇよ!!」
・・・お前は犬か!!!っとみんなは心の中で総つっこみ。
「心配しないで。司の枕は使ってないよ。牧野の使ったから。」
もう司はマジ切れ寸前!!
これはヤバイと思って、あきらと総二郎は類をかかえてリビングに戻り、滋と桜子も一緒に戻った。
vol.45
「おい、つくし!いつまでも顔赤くしてんじゃねぇよ。ったくゆだんもすきもねぇ。
なんか自分の庭を荒らされた気分だ。くそっ!!」
・・・自分の庭って・・・
あきれるのと同時に笑いがこみ上げてくる。
「早くあっち行こ。みんな待ってるから。ご飯は?」
「食うよ。・・・今日あいつは?」
「・・・聖?今日は来ないよ。てゆーか聖が来る日に合わせて来ないでよ!
ホント大変なんだから!心臓がいくつあっても足りないわ。」
腰に手をあててため息をつくつくしを見て唇を尖らせる司。
「俺のいない間にこの部屋でふたりっきりなのは嫌なんだよ。特にあいつとは絶対嫌だ!」
いやだいやだってお前は子供か!!!
いちいち相手にしてるのがアホらしくなったので、適当に返事をしてみんなの元へ戻った。
そして司のバースデーパーティー当日。
あたしは主役でもないのに緊張していた。
だって主役のパートナーだし、道明寺家だし・・・。
しかし司のタキシードに合わせたドレスを着て司の隣に並んでいるつくしは誰が見ても司に似合う女性だった。
たくさんのお客様からあたし達の関係を聞かれるけど
毎回司は「大切な友人です。」と言う。
『大切』というところにとてもうれしくなるけれど、
『友人』というところに少し寂しくなる自分がいた。
あたし達は恋人同士だけれど、周りに言えない恋人なんてやっぱり苦しい・・・。
・・・ダメだな、あたし。
好きすぎて司の全部がほしくなっちゃう・・・。
ホントはみんなに恋人ですって言ってほしい・・・
今はまだそんな時期じゃないのはわかってるけれど、
やだな・・・あたしって独占欲強いのかも・・・
「主役のパートナーがそんなシケたツラしてんじゃねーよ。」
NOVEL