vol.46
「聖?!来てたの?!・・・1人?」
あたしの目の前には優しく微笑んでいる聖がいた。
「お父さんに出席しろって言われたからな。1人じゃねぇよ。
三条さんと一緒。でも今知り合いと話してるみたいだからこっちにきたんだ。」
桜子?!・・・だからあんなに聖のこと聞いてきたのか。
・・・ん?!まてよ・・・?!
聖が秘書以外の人とパーティーに出席するということは・・・
「聖、桜子のこと狙ってるの?!へぇ〜知らなかったなぁ〜。
でも桜子もその気だから大丈夫だよ!がんばってね!!」
つくしの勘違いに苦笑する聖だが、すぐに話をそらした。
「そんな事より、お前はなんで主役のパートナーなのにこんな隅っこに1人でいるんだよ?!」
「だって司も花沢類達も取引先の人と仕事の話してるから。それにこれでも緊張してんのよ?!」
「お前が緊張って・・・」
似合わないとでも言うように笑うので、周りのお客様に見えないように軽く脇腹にパンチをお見舞いした。
「まぁそう怒るな。じゃぁ久しぶりに一曲踊りましょうか?」
さっきとはうってかわってレディーに対する接し方をする聖に
ちょっと照れながらも差し出された手をとった。
「聖とダンスなんて久しぶり。よく足踏んだよね。」
「お前めちゃくちゃ下手だったもんな。あの時は足の指が折れるかと思った。」
「失礼な!!」
怒りながらも楽しそうに踊る2人は美男美女で、周りの人々はいつしか見とれていた。
つくしも周りの視線に気付いたらしく、もうやめようと言ったが、
聖はそんなの気にするなと言った。
気にするに決まってるでしょ!!女の人の視線が刺さるのよ!!
それにこんなところを司に見られたらまた怒るし・・・
つくしは1人であたふたし、思わずドレスの裾を踏んでしまい聖に抱きつくかたちになってしまった。
「・・・ごめん。裾踏んじゃったみたいで・・・」
つくしはすぐ離れようとしたが、聖はつくしを抱きしめたまま離さなかった。
vol.47
「・・・聖?!みんな見てるよ・・・?!」
けれど何も答えない。
すると後ろから急にものすごい力で腕をひかれ、後ろに倒れそうになったが
誰かにうけとめられた。
受け止めたのは花沢類。
だけどあたしの腕をつかんだ感触は・・・
「人のパートナーに手を出さないでいただきたい。」
・・・司に見られてたんだ・・・どうしよう・・・
「大丈夫?司は力の加減てもんを知らないからね。」
花沢類はあたしの顔を覗き込み、頭をポンポンっとした。
お礼の言葉を言おうとした時、再び腕をひっぱられてあっという間に会場の外に連れて行かれた。
ほとんど人がいない隅の方へ連れて行かれ、壁に体を押さえつけられる。
「お前この前何でも言うこときくって言ったよなぁ?!俺は男に近寄んなって言ったよなぁ?!」
「言ったけど・・・でも相手は聖だよ?!聖に近寄るななんて無理だよ!」
すると司はつくしの首筋にキスマークをつけようとする。
「やっ・・・やめてっ!!いやっ!!!」
ありったけの力で司を押し返した。
そんなつくしを睨みつけ、思いっきり壁を殴った。
怒鳴られると思ったが、司を見ると必死に自分を抑えようとしているようだった。
司の瞳はとても辛そうで・・・
司はつくしを優しく抱き寄せて呟いた。
「・・・わりぃ。お前のことを友人としてしか紹介できない自分に腹立ってた。
お前の気持ちを疑ってるわけじゃねぇけど、俺だけのものにしてぇんだよ・・・。」
司の怒りようにびっくりして震えていたつくしだが、司の言葉に愛しさが込み上げてきた。
何も言わずにありったけの力で司を抱きしめ返した。
司もあたしと同じ気持ちなんだね・・・
vol.48
しばらくそのままでいると、ハイヒールで歩く音が聞こえてきた。
こんなところを見られてはいけないと思い、お互いなごりおしげに離れた。
すると急に声をかけられた。
「あなた達こんな所にいたのね。主役がこんなところにいるなんて困るわ。
全く。2人ともいらっしゃい。」
声をかけてきたのは魔女・・・じゃなくておばさま。
ついてくるように言われ、あたし達は顔を見合わせなんのことかと疑問に思いながらもそのままついて行った。
「失礼します。」
そう言って入った部屋の中にはお父様と聖がいた。
・・・この前のデジャヴ?!!
このパターンやめてよと思いながらもしょうがなく聖と司の間に座ろうとすると、
司があたしの腕をひっぱって、わざわざあたしと聖の間に座った。
絶対さっきのこと根に持ってるな・・・今日の夜大変そう・・・
そんな事を考えながらもなんの話かとお父様とおばさまに聞いた。
「今日は司君の誕生日ということで、私から君にチャンスをあげようと思ってね。
このチャンスを逃せばつくしとの結婚はずっと認めない。どうだい?やってみる気があるかね?」
はぁ?!!急にとんでもない話になってるよ?!!
司のほうをチラっと見ると、一瞬驚いた顔をしたがすぐに冷静な顔になる。
「もちろんです。つくしさんと結婚できるならなんだってやります。」
司の言葉にピクっと反応する聖。
「そうかそうか。君ならそう言うと思ったよ。
相手にとって不足なしと言ったところかな?!なぁ聖?」
突然聖にふるお父様に、あたし達はまったくわけがわからない。
お父様はあたし達の反応を見てニヤリとしながら言った。
「道明寺と宮川の業務提携。この契約を君たちに任せるよ。
道明寺側の責任者は司君。宮川側の責任者は聖。契約条件は君たち次第。
双方に利益があるように。この契約では司君の秘書は村上君にしたから、
つくしはこの契約に一切口を出さないように。この契約が成立すれば、
司君とつくしの結婚を認めよう。お互いの出す条件に不利益な点があって
契約不成立の場合は別れてもらう。どうかな?」
NOVEL