vol.49


・・・道明寺と宮川の業務提携なんて、双方に利益があるに決まってるんだから成立するのは簡単。





だけど責任者がこの2人じゃ話は別よ。





こんなに仲が悪い2人が契約を結ぶなんて難しいに決まってる。




やっぱりお父様達は結婚に反対なの?!










「お父様、別にこの2人じゃなくてもよろしいのでは?!

 お父様達だけで十分だと思います。」





「つくし、さっきも言ったがお前はこの契約に口を出してはいけない。

 すべては私と楓社長で決めたことだ。」





なんとか方法を考えるが、いい案が浮かばず悩んでいると、急に司が立ち上がった。





「わかりました。その契約必ず成立させてみせます。

 聖さん、どうぞよろしくお願いします。」





そう言って司は握手をするために手を差し出した。





すると聖はフッと笑いながら立ち上がり、司の差し出された手と握手をする。




と思ったが、それをはらいのけた。








「悪いがその契約に時間をかけて、他の仕事に支障が出ればそれこそうちの不利益。

 契約不成立だ。失礼します。」






そう言ってさっさと部屋を出ていった聖。




そんな聖の態度に青筋を浮かべる司。





あたしはどうすることもできず、聖の後を追った。









「・・・やれやれ、聖はつくしの事になるとすごいからね。まぁがんばりなさい。」






つくしと聖が出ていったドアを見つめながら司は呟く。





「それは私もです。つくしだけは絶対に譲れない。」













「聖!!待ってよ!!ねぇ!!待ってってば!!」




何度か呼んで、やっと止まってくれたと思ったら、聖の立ってる先には桜子がいた。










vol.50


桜子・・・聖を待ってたのかな。





でも今はそれどころじゃなくて・・・








あたしは聖の側に行きちょっと話をしようとすると、桜子があたしの前に来た。





「先輩。私、聖さんの事好きです。・・・応援してくれますよね?!」





突然の桜子の告白に驚いた。







えぇ?!!この2人両想いじゃん!!!




桜子の目は真剣そのものだし、聖は・・・







「三条さん、行きましょう。」




なんだか聖にしては強引に桜子の腕を引っ張って車に乗って行ってしまった。




でも聖が女性にそんなふうにするのは初めて見た。














「・・・三条さん。さっきのは一体何のつもりですか?!」





パーティー会場を後にし三条さんの家の前に着いた。






俺は少なからずもイラ立っていた。








俺は・・・俺はお前しか見てない。








お前しか考えられない。










この言葉を口にすることは許されない。





だから今まで行動で示してきた。





三条桜子が俺の事をどう思っているかなんて態度ですぐわかる。





だが俺はそれを知らぬふりをしてつくしの友人という立場であるこの人と接してきた。





なのにこの人はつくしと俺の前で告白をした。




つくしが親友の恋を応援しないはずがない。










世の中のすべてはどうしても俺からつくしを奪うのか・・・?!





血は繋がってないのに・・・





本当ならなんのためらいもなく彼女に『愛してる』と言えるのに・・・












vol.51


俺は三条桜子に冷たい視線を送った。





彼女はそんな視線にもひるむことなく答える。





「私は自分の気持ちを言ったまでです。」






「あなたは俺の気持ちをわかってるはずだ。なのにつくしの前であんな事・・・

 自分がよければ他人はいいのかよ?!悪いけど俺はあなたには興味ないから。」





聖は吐き捨てるように言って車に乗ろうとした。




するとそんな聖を桜子は見据える。






「人はみな自分の幸せを望むものです。聖さんだって先輩と道明寺さんの仲を引き裂いて、




先輩を自分のものにしようとしてる。それは自分のためではないんですか?!




自分の手元に置いておきたいがために先輩の気持ちを無視しようとしてる。




さっきの言葉、そのまま返します。私は先輩達には幸せになってほしい。




だけど聖さんにも幸せになってほしいんです!!」






そんな桜子の言葉に眉をピクリと動かした聖だったが、




静かに煙草に火をつけ、上にのぼる煙を見つめながら呟いた。






「俺は小さい頃から幸せを望んできた。なのにあと少しってところでこの煙のようにはかなく消えるんだよ。





だからそんな望みは捨てたつもりだった。・・・だけどつくしと出会ってからは初めて幸せを感じた。





今まで望むことをしなかった俺がたった一つ望んだものをあいつはくれた。





それがあればもう何もいらない。命だって捧げてもいい。





俺の幸せを望むのなら俺からあいつをとらないでくれ。





それさえあれば地獄に堕ちようがかまわない・・・。」







それだけ言うと聖は車に乗って去っていった。





月明かりに照らされた聖の端正な顔がひどく悲しみにゆがんでいたのを桜子は見逃さなかった。










彼は昔の私と同じ。




たった1人の人だけを手に入れたくて周りを傷付けようとしてる。





あの時は先輩が救ってくれた。





今度は私が彼を救いたい。








あきらめないっていうことを彼女から学んだから・・・









NOVEL