vol.52
「ねぇ知ってた?!桜子と聖って両想いなんだよ!!」
今日は絶対に泊まっていけと強制的に決められていたつくしは
司の部屋でついさっきんの事を思い出して、飛び跳ねんばかりに興奮していた。
もちろん司は聖の気持ちを知っているのでつくしの言ってることが理解できない。
「聖ったら強引に桜子の腕をつかんでどっかに行っちゃったの。
桜子もすっごい真剣に告白してきたし、結構お似合いよね!大人のカップルって感じ!」
「俺らだって大人じゃねぇか。」
「なんか違うのよ!」
つくしの話を聞いて、やっとだいたいのことを把握した司だが、
桜子の気持ちには司も初めて知った。
「・・・お前の鈍感にはある意味感謝するぜ。けどこれじゃぁフェアじゃねぇよな。
・・・宮川聖の好きな奴は三条じゃねぇぞ。」
その一言で一気に興奮がさめる。
「なんでよ?!だってあんな聖初めて見たんだよ?!
鈍感なあんたがわかるわけ?!」
いかにも聖のことをよくわかっているのはあたしなんだとでも言うような
つくしの発言に期限が悪くなる司。
「お前はあいつを兄としてみてるからわかんねぇんだよ。
男としてみてみると鈍感なお前でもちょっとはわかるはずだ。
まぁその前にあいつを男としてなんかみさせねぇけどな。」
「結局あたしにはわからないんじゃない!!
いいわよ、直接聖に聞くから・・・・・・ってうわぁっっ!!!」
急につくしはベッドの上に組みしかれて、
司の顔がわずか1センチも離れていないような至近距離にきた。
「俺の誕生日に他の男の話ばっかすんな。お前は俺の事だけ考えてろ。」
司が喋ると時々互いの唇がかすかに触れ合って、なんだか変な感覚になる。
それはキスの寸止めのようで・・・
つくしはまだごちゃごちゃと聖との関係をうるさく言ってくる司の首に腕を回してキスをした。
いつも司がつくしのおしゃべりを遮るように。
しっかりと重なった唇に満足するつくし。
「司、お誕生日おめでとう。誰よりも愛してる・・・」
司はつくしの大胆な行動と言葉に顔を赤くしてかたまってしまった。
つくしはしてやったりという顔をしてベッドから起き上がろうとすると、
司はつくしをおもいっきり抱きしめた。
「・・・お前の愛はまだまだ足んねぇんだよ。
だから・・・宮川との契約が成立したら結婚してほしい。」
vol.53
突然のプロポーズに目をこれでもかというくらい見開いて驚いた。
結婚・・・
そりゃぁ考えたことがないわけじゃないけどあたしはまだ20歳で司は21歳。
どう考えても早すぎるよ。
まだまだあたし達には学ぶべき事がたくさんあると思う。
そんなあたしの困惑に気付いたのか、司は望むような口調で続ける。
「別に俺はお前を家ん中に縛り付けたりはしねぇよ。
仕事だってできる歯にでやればいい。もちろん俺の目が行き届く範囲だけどな。
・・・なさけねぇけどお前と少しでも繋がってる証拠がほしい。
法的にでもお前は俺のもんだって示しておきたい。
もし・・・もしなんかあって離れちまってもそれがあればずっと繋がっていられるし・・・」
司のその言葉になんだかがっかりした自分がいた。
「・・・司は結婚をなんだと思ってるの?!
法的にお互いを縛っておかないといけない状態で結婚してもうまくいきっこないよ。
あたしはたとえ司と結婚できなくても一生あたしが愛するのは司だけだって自信をもって言えるのに、
司は違うの?!紙切れ一枚で繋がっててもそばに愛がなくちゃ逆に苦しいだけだよ・・・
法的に繋がることがそんなに大事なら、あたしと同じ名前の人と結婚すればいいじゃない。」
言った後、後悔した。
ここまで言うつもりじゃなかったのに・・・
でもあたしは司はただ純粋にあたしとずっと一緒にいたいと思ってくれて
結婚という言葉を出したんだと思ってたからちょっと悲しかったの・・・
すると司はさっきとは違って低い声で喋り出した。
「俺はお前とどんなふうになっても繋がっていたい。
お前なしじゃ生きられねぇんだよ!!
たとえお前が俺の側にいなくても、その証拠だけでも生きようと思える。
それほどお前のことを愛してるのに、お前は違うんだな・・・?!
・・・シャワー浴びてくるわ。」
司はそのままバスルームへ入っていってしまった。
vol.54
桜子が宮川聖に告ったことを俺らが知ったのは司のバースデーパーティーの夜だった。
それぞれ解散して休もうとしてたところ桜子からの呼び出し。
来ないと一週間ショッピングに付き合わせると脅されて、
仕方なくラフな格好に着替えていつもの店へ向かった。
俺が着いた時には急に呼び出されて期限の悪そうな総二郎と
ケーキをうまそうに食ってる滋と妙に落ち着き払った桜子がいた。
まぁ類は来ないだろうと思ってたけどな。
「よし桜子、あきらも来たんだからそろそろ用件を言え。」
総二郎がせかす。
桜子は一点を見つめたままだったが急に立ち上がって言った。
「私、さっき聖さんに告白しました。」
ブッッッゲホッ・・・
「ちょっ・・・滋さん汚いです!!」
滋は驚きのあまりケーキを喉につまらせたみたいで、
桜子が必死で水を飲ませているが、今のは滋じゃなくてもつまらせてるだろう。
どう考えても行動が早すぎる・・・
まだ賞賛もないのに桜子が負け戦をするなんて考えられねぇ。
「おいおい桜子、お前どーしたんだよ?!ちょっと急すぎやしねーか?!」
総二郎もありえないというような顔をしている。
「もうなんでもっと早く言ってくれなかったのぉ?!!
桜子が告るなんて激レアだから見たかったのにぃ〜〜!!!」
「滋さん・・・殴りますよ?!」
「まぁまぁ落ち着け。で、あっちの反応は?」
結果なんてほとんどわかってるようなもんだけど一応聞いてみた。
「もちろんダメでしたよ。おまけに怒らせてしまいましたし。」
やっぱりな・・・あいつが牧野をあきらめるなんて思えねぇ。
あれは司と同じ系統だからな。
けどやっぱり桜子の意図がわからない。
どーせゆくゆくは二人は結婚するんだろうし、そうなりゃあの男でも手出しはできないはず。
それからでも遅くはないのに・・・。
桜子は俺が考えていることを読んだのか、落ち着いた口調で言う。
「私、先輩も道明寺さんも好きです。だから聖さんを助けなくちゃいけないんです。
あの人・・・私より重症だから・・・」
彼を助けないと先輩も道明寺さんも傷付くことになる・・・
そして彼も二度と消えない深い傷を負ってしまう・・・
人を傷付けるということはその何倍も自分が傷付くということ・・・
正直これが愛なのか同情なのかわからない。
もしかしたら昔、自分がしたことへの後ろめたさなのかもしれない。
だけど私はその傷の痛みを知っているから・・・
だから救えるのは私だけだと信じたい・・・
「牧野と司が好きだからあいつを助けるなんて意味わかんねぇよ。
とりあえずもうちょっと作戦を・・・」
俺は総二郎の言葉を制した。
今の桜子の目は何事にも一直線な牧野の目に似ていた・・・
だから俺は桜子に賭けてみようと思う。
NOVEL