vol.13
くっそーーなんで誰もいねぇんだ?!
誘ってきたのはあいつらだぞ!来たらぶっ殺す!!
司はすでに部屋にいた。
しかし、誰も来る気配がないため青筋をたてていた。
しかたなく仕事の書類に目を通していると、
部屋のベルが鳴り、ドアが開く音がした。
そして中に入ってきた人物を見た瞬間、手にある書類が床にちらばった。
「道明寺・・・なんで・・・?!」
つくしの目からは涙があふれる。
「牧野・・・・」
次の瞬間、司はつくしを強く強く抱きしめていた。
何度自分の名を呼ぶ声が聞きたいと願ったか・・・
何度この華奢な身体を抱きしめたいと思ったか・・・
だけど今、そのすべてがこの腕の中にある・・・
俺が愛するたった一人の女・・・
「俺は今でもお前だけを愛してる・・・もう離さない・・・」
あんたからの愛の言葉をどれだけ聞きたかったか・・・
この力強くて温かい腕の中にどれだけ抱かれたかったか・・・
「道明寺!!」
つくしは司の背中に腕をまわし、力をこめた。
そして司は両手でつくしの頬を包み、唇を重ねた。
はじめは軽くついばむようなキス。
次第にお互いの存在を確かめ合うような深いキス。
そのままつくしを抱き上げベッドまで運ぶと、そっと身体を倒した。
長い長いキスから解放されると、荒い息を整えながら、
頬を朱に染め、潤んだ瞳で司を見ていた。
そんなつくしを見て少し微笑むと、首筋に唇をはわせる。
だんだん思考回路が途切れていく中、つくしはあることを思い出した。
ーーーーーーー30分後には俺らが部屋に行くからな!!ーーーーーーーーーー
・・・・ってもうすぐじゃん!!!
どうしよう!みんな来ちゃう!!!
「んっ・・・ちょっちょっと道明寺待って?!」
つくしは司の胸を押し返すが全く動かない。
司は抵抗しようとするつくしの手を片手で封じ、もう片方の手は胸に触れる。
その瞬間、つくしの身体がぴくっとはねた。
「やっ・・・司!!!お願い待って!!!」
その声に顔を上げた司は子供のような笑顔になった。
「お前、初めて俺のこと名前で呼んだな。これからもそうやって呼べよ。」
「えっあぁ・・・そういえば・・・うん・・・ってちがうのよ!
もうすぐここにみんなが来るの!!」
一気に機嫌が悪くなる司。
その隙にベッドから降りて服を直すつくしは、顔が真っ赤であった。
司はそそくさとベッドルームを出るつくしを見て、
あいかわらずだなと笑って、リビングにむかった。
つくしは床に散らばっている書類を集めてテーブルに置く。
「噂では聞いてたけど、ちゃんと仕事してんだね。」
そう言いながら振り返って笑う姿に思わず見とれてしまった。
司はつくしの腕を引っ張り、再び抱きしめる。
「俺はお前を迎えに行くために仕事をしてきた。
もう昔みたいな思いはさせない・・・だからこれからは側にいてほしい。」
素直な気持ちをぶつけられて、再び涙がこぼれる。
「うん・・・好き。大好き。側にいたいよ。」
司はつくしの顔全体にキスをし、最後に唇にキスをした。
どうすることもできなかった胸の痛みからようやく解放された
お互いを想って眠りについた夜・・・
満たされる事のなかった毎日・・・
それでもあきらめられなかった想いがやっと届いた
vol.14
そっと唇を離して抱き合っていると、ふいに後ろから声が聞こえた。
「人の婚約者泣かせるなんてどーゆーつもり?」
びっくりして顔を上げると、そこにはニヤニヤしている西門さんと美作さん、
優しく微笑む花沢類と、よかったねと言いながら涙目になっている桜子とすでに泣いてる滋さんがいた。
あたしはとっさに道明寺から離れた。顔が真っ赤になってるのが自分でもよくわかる。
横目でチラっと道明寺を見ると額に青筋が・・・
「おめぇら何で邪魔しに来るんだよ!もっと気をきかせろ!!それと類!!!
お前今なんつった?!お前の婚約者は宮川財閥会長が溺愛してる娘だろが!」
「そうだよ。だから泣かすなって言ってんの。」
みんなが必死に笑いをこらえてる。
道明寺は今にもキレそうなので、慌てて説明をし出した。
「あっあのね?!あたしの名前は宮川つくしなの!えっと・・・それで・・・」
混乱して何をしゃべってるのかわからないあたしを見て、みんなはやれやれと言って代わりに説明してくれた。
予想通り道明寺は口をあんぐりあけて呆然と立ち尽くしていた。
「だめだなこりゃ。ほっといて飲もうぜ。」
そう言ってホテルのボーイに食事とワインを持ってこさせ、パーティーを始めた。
あたしはいつまでたってもソファーに座って動かない道明寺の側に行って、顔を覗き込む。
「ねぇ・・・びっくりさせてごめんね?!あたしもこういう世界とは無縁だと思ってたから、
今自分がこの世界にいることが不思議なの。
でもあんたに少し近づけるかもとか思っちゃったり。
だけどこの世界に入って改めて道明寺財閥って大きいなって実感した。」
少し寂しそうに笑うつくしを見て、ようやく司は口を開いた。
「宮川だってかわんねーよ。はぁ・・・なんかお前には驚かされてばっかりだな。
けど、お前ホントに類の婚約者なのかよ?!」
子供のように拗ねて言う道明寺を見て、愛しさがこみ上げてきて自然と笑顔になる。
「お見合いはしたけど婚約だなんて話はないよ。さっき言ったじゃん、あんたの側にいたいって。」
牧野の笑った顔はホントにホントにかわいくて、顔が赤くなるのも
口元が緩むのも隠すことを忘れるほど見入ってしまった。
「で、俺らからのクリスマスプレゼントはどうよ?」
一通り食事を終え、酔いを醒ますために窓の側で風にあたっていた俺の側に総二郎、あきら、類がきた。
クリスマスプレゼントねぇ・・・
滋と桜子が酔いつぶれてつくしによりかかって寝ている姿を見る。
あいつは窓の外の月を見ていた。
「・・・俺にはやっぱあいつしかいねぇと実感したわ。サンキューな。」
「司が礼を言うなんて激レア・・・」
「少しは大人になったか?!」
類と総二郎の言葉に青筋をたてる司。
するとあきらが少し真剣な顔で言う。
「これからどーすんだよ?」
「・・・もう絶対離さねぇよ。・・・あいつと結婚したいと思ってる。
まぁお互いの家柄が家柄だから騒ぎになるとは思うけど、あいつを守れるぐらいの力も
実業家としての力もつけてきたつもりだ。まだまだ親父の足元にも及ばないけどな。」
「やっぱ成長したな、司。」
その答えにあきらは安心する。
「けどよ〜問題はあいつだよな、牧野。前の大学でミス白川にまで選ばれて、
毎日のように男に誘われてんのにそれに気付いてねぇもんな。
英徳でも俺らがいなかったらどーなってたか。
しかも一番厄介なのがボディーガードだしよぉ。あれは司並みだよな。」
司が誰だと言うと同時につくしの携帯が鳴る。
つくしはもたれかかっている2人を上手によけると電話に出た。
vol.15
「もしもし・・・あっ聖。えっ?!あっホントだ・・・ごめんなさい。
うん・・・うん、大丈夫よ。酔ってない。あーもうだからお土産とかいらないってば。
はいはい、わかりました。うん・・・うん、お仕事がんばってね。うん、それじゃぁ。」
ふう〜・・・もう10時過ぎてたなんて気付かなかったな。
それじゃぁ帰るか・・・って背中にすごい殺気が!!
恐る恐る振り返ると、そこには青筋をたててる司とあきれてるF3。
「お前今の誰だよ?!男だよなぁ?!すげー親しそうじゃん。」
怒鳴ってはいないけど、見るからに顔が怒ってる司。
こっこわい・・・
後ずさりしそうなつくしの腕を司がつかむ。
それを見かねて類が助け舟をだした。
「宮川聖だよ。知ってるでしょ?牧野の兄にあたる人物だよ。」
すると思い出したようにあぁあいつかと言う司。しかしまだ機嫌は直らない。
あきらと総二郎は苦笑している。
「そいつが一番厄介なボディーガードだ。気をつけろよ。」
「しっかしよぉ〜お前また10時までに帰るつもりだったのかよ?!
やっと再会したのにそれはないでしょ。お前一緒にいたいと思わないわけ?!」
総二郎があきれたように言う。
「そっそんなこと・・・一緒に・・・いたいに決まってるじゃん・・・
でも聖に約束したし・・・聖も怒ると恐いのよ・・・」
下をむいてブツブツと言うつくしを見て、司は顔を上げさせ自分と目を合わせるようにする。
「俺はしばらくは日本にいるけどほとんど缶詰状態だ。
だから少しでも一緒にいられる時間は一緒にいたい。けど、お前はちがうのかよ?!」
そんなまっすぐな目でそんな事言われたら帰れないよ。
あたしだって一緒にいられる時間はずっと一緒にいたいよ・・・
するとつくしは電話をかけはじめた。
「もしもし、あっつくしです。佐々木さん?!・・・はい、大丈夫ですよ。あのね・・・
その・・・聖にあたしは帰って来てすぐ寝ちゃったって言ってくれない?
・・・うん。滋さんとかも一緒だから大丈夫。ホントにごめんなさい・・・
うん。それじゃぁおやすみなさい。」
電話を切った途端に総二郎やあきらがニヤニヤ笑っている。
「よかったなぁ〜司。お前のためにウソまでついて一緒にいようとしたんだぜ?!
愛だよなぁ〜!!!」
「つくしちゃんもやるね〜〜」
「うるっさい!つくしちゃんって呼ばないでよっ!気持ち悪い!!」
顔を真っ赤にして怒るつくし。
すると、
「それじゃぁ俺らは帰るか。」
そう言って滋と桜子を抱き上げて帰ろうとするF3。
「えっなんで?!みんなここに泊まるんじゃないの?!え?!」
動揺するつくしに対し、
「俺ら門限11時だから。」
そう言って立ち去ろうとすると類が急に、
「牧野が一緒にいたいって言うんだったら俺は残るけど。」
と、言い出した。
「何言ってんだ類!!お前も邪魔すんな!!とっとと帰れ!!!」
そう言って司はみんなを追い払った。
NOVEL