vol.16

動揺しているつくしにさらに司は追い打ちをかける。


「風呂でも入るか。お前そこのバス使え。俺はあっちの使うから。」


スタスタと行ってしまった司をポカーンと見ているつくし。



いやいやいや、どーしてこーなってんのよ?!


急すぎるよ・・・心の準備がまだできてないもん!!


別にイヤじゃないけど・・・恥ずかしいというかなんというか・・・



悶々と考えながらお風呂に入り、出ると司がバスローブ姿でソファーの上で書類に目を通していた。


あたしは司の隣に座ってのぞいてみる。


「わりーな。明日午前中だけ休みとったから、これだけは今日中に終わらせねーといけねぇんだ。」


「ううん、いいの。すごいね、なんか別人みたい。

・・・明日休みとったの?なんで?」


鈍感なつくしに司はため息をつく。


「なんでってお前と一緒にいるために決まってんだろ。」


「えぇ?!そんなことしていいの?!」


「別にいいだろ。こうやってちゃんと仕事してるわけだし。お前うれしくねーのかよ?!」


つくしは少しムスッとした司を見て笑うと、


「・・・うれしいよ。すっごく。」


と、素直に答えたので、司は顔が赤くなった。


赤くなってる〜〜っと言ってからかわれると、急に書類をテーブルに置き、口を塞いだ。


急だったのでつくしは驚いたが、ぎこちなく応える。


息切れのためかつくしから吐息がもれると、そのままベッドに運んだ。


ちょっと待ってと言うつくしに対して司は、


「もう待てねーよ。めちゃくちゃ愛してる・・・お前しかいらない。」


あたしはその言葉に涙が流れる。


「あたしもあんたがいればそれだけでいい・・・愛してるよ、司・・・」


そして2人はやっと結ばれた・・・







翌朝、先に目を覚ましたのは司だった。


いつもとは違い自分の腕の中のぬくもりに気付き、目が覚めたらあいつがいた。


一瞬びっくりしたが、昨日のことを思い出し、いっそう強く抱きしめた。


昔抱きしめた時の感触とは少し違っていて、少し丸みをおびていっそう女っぽくなっていた。


やっと自分のものになった・・・どれだけ待ち望んだだろうか。


寝ているあいつの頬にそっとキスをすると、あいつの目がゆっくり開いた。


「おはよ。」


「おっおはよっ」


あいさつだけすると顔を伏せてしまったつくし。



きゃ〜〜もうどんな顔すればいいのよ!!


恥ずかしすぎる〜〜〜!!!



「・・・身体大丈夫かよ?」


「・・・うっうん。」



とっとにかく服を着なくちゃ!!!



「どっ道明寺、あのさ・・・」


「司。」


「えっ?」


「司って言えよ。昨日そう呼べって言っただろ。ヤってる時はちゃんと呼んでたじゃねーか。」


「ちょっと恥ずかしいこと言わないで!!」


司の腕をバシっとたたいて真っ赤になっているつくし。


「なんだよ、本当のことじゃん。ほら、ちゃんと呼べ。」


どんどん顔を近づけてくる司にとまどって、ついに


「つかさ・・・」


その瞬間唇が重なった。




頬を染めて恥ずかしそうに小さな声で俺の名を呼ぶお前がすげー愛おしい。


こんな顔誰にも見せるなよ。


お前のすべては俺のものだ。




「つくし、愛してる。・・・そんじゃぁシャワー浴びてくるわ。」


司は脱ぎ捨ててあったバスローブをはおってバスルームに消えていった。


「バカ・・・」



だけどあたしも愛してる・・・



あたしは小さな声で呟いた。







vol.17

「お前さ・・・ちゃんとお嬢やってんだな。」


お互いシャワーを浴びた後、朝食を頼んで食べていると、不意に司が言った。


急になによと聞いてみると、


「すげ−綺麗になったし、テーブルマナーとかも完璧だからよ。」


「そりゃぁがんばって勉強したもの。英語にフランス語にドイツ語。

ピアノに茶華道にダンス、テーブルマナー。この3年間にすべて身につけたの。

みんなすごいよね。こんなたくさんの事を子供の頃から学んでたなんて。ちょっと尊敬した。」


「バーカ。俺らは子供の頃からだけど、お前はこの3年間で完璧にしたんだろ。

そっちのほうがすげーよ。」



褒めてもらえるなんて思ってなかったな・・・



ちょっと驚いたつくしだったがすぐに微笑んでありがとうと言った。



花が咲くように笑うあいつはすごく綺麗で、俺は自分の顔が赤くなるのがわかった。


照れ隠しに目をそらしてコーヒーを飲みながら新聞を読んだ。



「もうお腹いっぱい。ごちそうさまでした。・・・そういえばあたし着替えないよ!

またドレス着て帰るのもなぁ〜・・・う〜ん・・・」


横目でチラっとつくしを見ると、さっきまで笑っていたのに、


今度は真剣にうなって悩んでいた。


「プッ・・・お前やっぱかわんねー!!コロコロ表情変えてすげーおもしれぇ!久しぶりに見たわ。」


そう言って大笑いしている司に頬を膨らませてそっぽをむいてしまったので、がんばって笑いをこらえながら、


「お前がさっきシャワー浴びてる間に着替えを持ってこさせたから安心しろ。

ベッドルームにおいてあるから早く着替えてこい。もう少しで行かなくちゃなんねーし。」


すでに用意されてることに少し驚きお礼を言おうとしたが、素直には言うことができなくて、


頼んでない・・・と言いながら着替えをしに行った。








家まで送ってもらった車の中で、あたしは意外にも大泣きをしてしまった。


「おい、家着いたぞ・・・って何泣いてんだよ?!」


あたしは知らず知らずのうちに涙を流していた。


すると司は優しく微笑んで、あたしを抱き寄せて髪を撫でてくれた。


その優しさに涙があふれる。


「もう離さないって言っただろ?!まだ当分は日本にいるし、

お前が会いたいって言えばすぐに駆けつける。

三日後のお前のバースデーパーティーでまた会えるし、毎日電話する。だから泣くな。」


司の腕の中でだんだん落ち着いて来たので頬を上げると、


あの整った顔がだんだん近づいてきて、唇が触れるか触れないかのところで止めて、一言囁いた。


「つくし・・・愛してる。」



その言葉・・・これからもずっと聞かせてね・・・



「あたしも・・・司、愛してる。」


そしてキスをして帰ってきたのが昨日。



どんな事にも乗り越えようと決心したばっかりなのに・・・



すでに問題発生。






今日、二日後のバースデーパーティー用のドレスが2着届いた。



差出人の一人は道明寺司。



そしてもう一人は・・・宮川聖。








vol.18

困った!!!


どっちを着たらいいの?!!




「そんなの道明寺さんからのものに決まってるじゃないですか!!

お兄さんと恋人ですよ?!どう考えたって恋人のでしょ!!」


滋さんと美作さんがデートなので、家に遊びに来た桜子が即答した。



・・・んー・・・そうだけど・・・どっちかに決めるなんてできないよ・・・




そんなつくしを見て、桜子はあきれる。


「先輩!!!もう先輩のパートナーは道明寺さんなんですよ!!!

聖さんはお兄さんなんです!!そんなふうにしてると誰かに道明寺さん取られちゃいますよ?!

ただでさえ注目されてるのに。それでもいいんですか?!」


「・・・よくないです・・・。ただ司もだけど、聖も怒ると恐いの。

・・・けど・・・そうだよね、しっかりしなきゃ。」


やっと決めたつくしにやれやれと思いつつも、桜子は小悪魔のように微笑む。


「やけに素直ですね〜。一線超えて、愛が深まったって感じですかね。」


急に言われて動揺しまくるつくし。


「なっ何言ってんのよぉ?!」


「先輩〜〜わかりやすすぎ!それに急に道明寺さんのこと『司』って呼んでるし。

やっぱりね!これでやっと大人の女になれましたね。」


意地悪く笑う桜子に、うるさいっと怒りながら顔を真っ赤にしていた。





桜子が帰ってから、お母様から電話があった。


少し困ったような声でしゃべっていた気がする。


「つくし?私たちバースデーパーティーの日に帰国の予定だったけれど、

明日帰ることに決めたわ。午前中に家に戻って、1時からお客様と大事な話があるの。

それにつくしも同席しなさい。だから支度しとくのよ。わかったわね?!」



・・・お客様って誰よ・・・まさか・・・またお見合い?!



詳しく聞こうとしたが、結局誰なのか教えてもらえず電話を切った。


なんかイヤな予感がするけど気のせいかな・・・。





その後すぐ、司から電話があった。


「あっ司?!ドレスありがとう。あんな素敵なもの本当にもらってもいいの?!」


「あぁ?!何言ってんだ。あれはお前のバースデープレゼントの1部だから遠慮するんじゃねぇよ!!」


「・・・1部って何?!プレゼントって普通1個なのよ?!いくつもいらないよ、もったいない!!」


「お前もったいないって・・・あの頃と真逆の生活してんのに、そーゆーとこホントかわんねぇな。

いいんだよ。これまで離れてた分として受け取れ。あっわりー仕事の電話だわ。」


「そっか、ありがとう。でもホントこれで十分だから!それじゃぁ仕事がんばってね。」


「あぁ、二日後早くお前に会いてーよ。じゃぁな、愛してる。」


司は急な日本への帰国によって、仕事が山積みであった。


けれど、ちゃんと毎日電話をくれて最後には愛の言葉。


どんなに短い時間でも、つくしにとっては一日で一番大切な時間であった。





次の日、お父様とお母様が帰国した。


なぜか元気なの?大丈夫?と、心配そうに聞いてくる。



何か変・・・何を心配してるの?!



いろいろ考えながらもお客様に会うために支度をしていると、

佐々木さんが私を呼びにきたので客室へ向かった。


ドアを開けて中に入るとそこには、



司と・・・魔女・・・そう、司のお母さんが座っていた。








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