vol.22
「お前さぁ、煙草吸うの?」
あの後てっきりお見合いだと思っていたため
少しドレスに近い服を着ていたつくしは着替えるために部屋に戻ったのだが、
司もなぜかついてきた。
そしてさっきはあまり見ることができなかったので、
改めてつくしの部屋をいろいろ見てると、ベッドサイドの棚の上の煙草に気がついた。
「えっ?吸わないよ。あぁそれ・・・聖のだよ。
たぶん出張の前の日に置いていったものだと思うけど。」
着る服をクローゼットから出しながら答えて司のほうを見ると、
さっきとは違ってすごい不機嫌な顔をしていた。
「宮川聖とは本当に兄妹だけの関係なのかよ?!こんなとこに煙草ってまさか・・・」
「何言ってんのよ!あたしと聖は兄妹だよ!一緒に寝てもそんなことしてるわけじゃない!!」
言った後すぐにしまったと思った。
司の目があたしを見つめる。
見つめるっていうより、獲物を狙ってるライオンみたいにこっちを見てる。
そしてどんどん近づいてくる・・・
「兄妹でもこの歳で一緒に寝る奴はいねーよ。
俺とねぇちゃんが一緒に寝てたら気色悪いだろ?!
なぁ・・・どうなんだよ、お前らの関係。」
後ずさりして近づいてくる司から逃げてたけど、
後ろにベッドがあることを忘れてて、つまづいてベッドの上へ勢いよく倒れた。
すると司は口角を上げて、あたしにおおいかぶさってきた。
「なぁどうなんだよ。お前はあいつとヤったのか?!」
「バッバカなこと言わないで!!聖とは兄妹だって言ってるじゃない!!
それにあたしの初めてこの前・・・」
そこまで言うと、あいつは真っ赤な顔をして顔を背けた。
俺はあいつのあごに手をかけ強引にこっちへ向かせ、その唇にキスをおとした。
やっと唇が離れて息を整えていると、司の手が服の中へ入ってきたので慌てて押し返す。
「ちょっと!!あたし着替えるんだから向こう行って!!」
「着替え手伝ってやるよ。でもその前にちょっと・・・な。」
結局抵抗もむなしくあいつの手に落ちた。
好きすぎておかしくなっちゃったのかな・・・
ずっと触れていたいと思うの。別にやらしい意味でじゃなくて、
でもそういうことも含めて全部・・・
あたしは司に触れていたい。
触れられていたい。
vol.23
ことが終わって余韻に浸っていると、あいつが急に起き上がった。
「ちょっと時間!もう4時だよ!5時から会議でしょ?!早く行かないと!!」
会議に出るのは俺なのに、なんでお前が焦るんだよ?!
もう少し余韻に浸らせろ!!!
「あのな〜今4時だろ。会議は5時だから余裕じゃねーか。
お前時計よめなくなったか。」
次の瞬間つくしのパンチが頭にヒット。
「・・・ってぇ〜・・・お前もう少しおとなしくしやがれ!」
「うるっさい!!いいから早くシャワー浴びて支度しなさい!!」
このままだと再びパンチがきそうだったので、渋々バスルームへ向かった。
司がバスルームに入って行った後につくしの携帯が鳴った。
「もしもし・・・」
「聖だけど元気か?ごめんな、あんまり連絡できなくて。」
「ううん、大丈夫だよ。明日帰ってくるんでしょ?!」
「あぁ、今から飛行機に乗る。お土産買ったけど、
あんまり見てる時間なかったからちょっと微妙。少ないかも。」
「だからいらないってば。出張行くたびにそんなに買ってきたら、
その国のモノ全部なくなっちゃう!!」
「そんなことよりドレスどーだ?気に入ったか?」
・・・げっ・・・その話題はヤバイ・・・
「えーっとね、そのードレスなんだけど・・・聖がくれたドレスは着ないことにしたの。」
「あぁ?!何でだよ!・・・あぁ〜お母さんが選んだドレスにしろって言われたんだろ。
ったく強引だからな〜。まぁしょうがねーか。じゃぁそのドレスは他の時にでも着ろよ。
あっもう離陸するから電話切るわ。それじゃぁ明日な。」
ふぅ〜・・・なんか誤解してたけど怒らなくてよかった〜〜。
・・・でも・・・さっきから背中に刺さる視線が・・・
どうしよう・・・振り向けない・・・
すると急に背後から抱きしめられた。
息ができないほどキツく・・・それだけで愛が伝わってくる・・・
「・・・離れてた時間を消すことはできねぇけど、その3年分はこれから2人で埋めていこうぜ。
だから・・・これからは何でも俺に言えよ。俺はお前の全てを受け止めるから、
お前は俺の全てを受け止めてくれ。」
聖とのことで不安に思ってるのかな・・・
『俺の全てを受け止めてくれ』だなんて俺様な司からは考えられない・・・
かわいい・・・
「もちろん!!司のことはあたしが支える!!」
司の顔が近づいて重なる唇。
あたしはあなたをずっと支える。
そしてあたしを支えられるのはあなたしかいないから。
そっと唇が離れると司が口角を上げて笑う。
「もう1回ヤルか。」
・・・とりあえずパンチを一発おみまいしてやろう。
「バカなこと言ってないでさっさと行けーーー!!!!」
vol.24
司が帰った後、リビングでお母様が待っていた。
紅茶を飲みながら片手に書類を持ち、何か悩んでいるように見える。
そっと隣に座るとあたしに気付いて微笑んだ。
やっぱり似てない・・・。
みんなあたしとお母様はそっくりだって言うけど全然そうは思わない。
だってすべてが綺麗なんだもん。
雰囲気は・・・美作さんのお母様かな。
すごく表情が柔らかでホント羨ましい。
「あら、何か顔についてるかしら?」
つくしがじっと顔を見るから不思議そうにしていた。
「あっううん、違うの。お母様と私って全然似てないなぁ〜って。
お母様はかわらず綺麗なのに・・・。」
ちょっと驚いた顔をしたが、すぐにクスっと笑い出す。
ほら、その表情もすごく素敵。
「たぶんそう思っているのはつくしだけよ。」
へっ?!あたしだけ?!
「ロンドンの知人にあなたの写真を見せると、私の若い頃かと思ったって言われるもの。
運転手の北村さんや使用人の佐々木さんだって日に日に私に似てくるって言ってるわ。
お父様も聖も気が気じゃないっていつも心配してるのよ。
私と似てないところと言えば・・・そうねぇ・・・鈍感なとこかしら。クスっ」
鈍感?!!
・・・みんなに言われるけど、そこまでじゃないと思うんだけどなぁ〜・・・
「そうそう、つくし。今あなたの引っ越し先を考えてるんだけど、どれがいい?」
「は?!引っ越し?!ちょっと意味がわからないんだけど・・・なんであたしが引っ越すの?!」
「だって明後日から仕事するのよ?!それも偽名で。楓さんも司君もいるから大丈夫だろうけど、
もし宮川の人間ってことがバレたらよからぬことを考える人もいるだろうし。
『道明寺』で、しかも司君の秘書として仕事をしてるとなれば、やっぱり司君との仲を探られるじゃない。
それでつくしが毎日この家に帰ってくるところを見られたりしたら、それもやっぱりマズイでしょ。
念には念をってこと!!で、どこのマンションがいい?
全部つくし名義の所なんだけど。やっぱりここ?!こっからの夜景は綺麗だし、屋敷にも結構近いし。」
ちょっと待って・・・
なんかいろんなこと聞きすぎて頭の中ごっちゃごちゃなんだけど〜〜〜!!!
NOVEL