vol.25
・・・そう・・・そうだよね・・・
道明寺と宮川だもん・・・そりゃバレたら大変だわ!!
「それじゃぁもう私の偽名は決まっているの?」
「えぇもちろん。でもそれは明日お父様から直接聞いてちょうだいね。
それじゃぁ部屋はここでいいわね?!うん、ここにしましょ!!さっそく準備させなくちゃ。」
あたしは一言も言ってないのにもう部屋決めてるし・・・
そーゆーところは滋さんに似てるかも・・・。
「あっだったら引っ越しの荷物まとめなくちゃ!!」
思い出したように立ち上がって部屋を出て行こうとすると、お母様がそれを遮った。
「そんなの必要ないわよ。あっちに必要なものすべてそろってるもの。
もし足りないものがあったら届けさせるから大丈夫よ。
それよりも明日の準備をしなくちゃね。」
やっぱり金持ちってちがうのね・・・
貧乏性がしみついちゃってるあたしには理解しがたいわ・・・
その夜11時55分頃に、司から電話がかかってきた。
「まだ起きてたのかよ?」
「うん。なんかちょっと緊張してるのかも。司は?
今日昼に会ったばかりなのにどーしたのよ?」
「わりぃーかよ?!俺はずっとお前といてぇんだよ。」
思わず顔が赤くなるつくし。
司もたぶん顔を真っ赤にしているつくしを思い浮かべ、笑いをこらえる。
「あっ・・・」
「えっ何?!あぁ仕事?」
「いや、ちょっと待て・・・5秒・・3・・・1・・・」
司が何をしたいのかいまいち分からないでいたつくし。
だが司の言葉を聞いた途端、司にしか見せない笑顔になる。
「つくし誕生日おめでとう。18歳のお前を見ることはできなかったけど、
これからはお前の側でちゃんと見ていくから。・・・愛してる。」
こんなに嬉しい誕生日は今までにないよ。
司がいるだけで全てがかわる・・・
ねぇ、司はどう?
あたしがいることで、幸せな気持ちになれてる?
あたしは司を幸せにするためにこの世に生まれてきたんだと思うの。
だから絶対に幸せにするから・・・
ずっと側にいてね・・・
vol.26
「司〜いい加減機嫌直せよ。しょうがねぇだろ。最初に頼まれたの類なんだからよ。」
あきらは自分の横で不貞腐れてる司をなだめようと必死だった。
「そうだよ〜それに司だとのちのち都合悪いじゃん?!
絶対デレデレしてバレちゃうよ。」
「滋っ!てめぇ誰がデレデレするだと?!俺がいつデレデレしたよ?!あぁ?!」
「道明寺さん、ちょっと落ち着いて下さい。周りの人に聞かれてバレたら大変ですよ。
それに先輩の心は道明寺さんにあるんですから。あの奥手で逃げてた先輩が3年も誰とも
付き合わずに想い続けて、お初をあげたんですから。もうゾッコンじゃないですか!!」
だんだん司の顔が緩んで赤くなってくるのを見て、さすが桜子!とみんなは思っていたが、
「おい!お初をあげたってまさか・・・ついに卒業かよ?!いやぁ〜お兄さんはうれしいねぇ。
やっぱ俺らのお膳立てがよかったんだなぁ〜。」
「俺に兄貴はいねぇ!!」
せっかく桜子が機嫌をとったのに、総二郎がからかったため、再び司の機嫌が悪くなってしまった。
今はつくしのバースデーパーティーだというのに、なぜ司の機嫌が悪いのかというと
それは数時間前のできごと。
少し早めに宮川邸に着いた司達は、まだ準備前のつくしに会っていた。
自分が主役の盛大なパーティーなど生まれて初めてのつくしは、やはり緊張していた。
「あ〜〜もうスピーチとかできないよぉ〜〜〜あぁ〜〜〜!!!」
「スピーチなんてどーでもいいじゃねぇか。それより早く準備しろよ。
パートナーである俺を待たせんな!!」
・・・あー・・・そーいえばこいつには言ってなかった・・・
どーしよー・・・絶対怒る・・・
「あっあのね、今日のパートナーなんだけど、え〜っとその・・・」
なかなかしゃべらないつくしの様子にだんだんつかさがイライラしてくる。
「今日の牧野のパートナーは俺だから。」
つくしを見かねて類がサラっと言った。
「あぁ?!なんで類なんだよ!!俺に決まってんだろうが!!」
案の定怒る司。
「だって俺は宮川夫人に頼まれたんだもん。司は頼まれてないでしょ?!
だから俺がパートナーなの。それに牧野のパートナーが道明寺司だなんて、
これこそ問題でしょ。2人の仲を詮索する人もいるだろうし。
そうなったら牧野とは付き合えなくなるよ?!」
つくしと付き合えなくなるという言葉に何も言えなくなる司だが。思いっきり類を睨んでいた。
そんな司の視線に天使の笑顔でかえす類。
2人の間にいたつくしはどーしていいかわからず、そのまま準備をしに自分の部屋へ行った。
vol.27
「ねぇ花沢類・・・どーしよう・・・すごい緊張してきたよ。
お客様たくさん来てるんでしょ?!あーもうイヤ。
お父様も別にこんな盛大にしてくれなくてもいいのに!!あ〜〜もうっっっ!!!」
あの後、支度を整えたつくしの部屋を訪ねた類はつくしの動揺ぶりに笑っていた。
やっぱこいつおもしろい・・・ククッ・・・
でもまぁしょうがないか・・・でもおもしろいって。
すげー顔強張ってるし。
笑っている類に気付いたつくしはもう知らないと言って背を向けてしまった。
やば・・・怒らせちゃったよ。
類はつくしの顔をのぞきこむと触れたか触れないかぐらいのキスをした。
その一瞬のできごとに目を見開いて驚くつくし。
「プッ・・・ユデダコみたい。でもさっきまでの顔よりはマシかな。
牧野、すっごく綺麗だよ。立ち振る舞いも品があって綺麗だし、
どこも恥ずかしがるところなんてない。もっと堂々としてなよ。
あと、いちおパートナーなんだから『花沢類』ってのはね。」
類の言葉にだんだん落ち着きが戻ってくるつくし。
いつもあたしを支えてくれるね・・・
だからいろいろな意味を込めて・・・
「ありがとう、類。」
君のその笑顔、それが見れるだけで幸せになる。
たとえ君が俺の側じゃなくてもね・・・
「それじゃぁ行こうか、お姫サマ。」
そっとつくしの前に手を差し出す。
そしてつくしはその手を取って会場へ向かった。
「ねぇ司〜つくしにどんなドレスプレゼントしたのぉ〜?」
「そんなの見てからのお楽しみだ!!」
先に会場にいる司達はつくし達の登場を今か今かと待っていた。
すると入り口のほうがざわめき出す。
「滋さん!先輩が来たみたいですよ!!」
滋とさくらこは近くへ行って見ようとしたが、周りにたくさんの人がいてまったく近づくことができない。
どうやら次から次へと挨拶をされているようだ。
挨拶をして輪から出てくる人々はみな、
『すごい綺麗だ。』とか『とてもお似合いね。』など賞賛の数々。
そしてやっと自分たちの前に来たつくしを見てみんなは言葉を失った。
司が送ったドレスはベビーピンクの総レースにパールがちりばめられている。
髪はアップにしてピンクのバラが飾ってあった。
首にはもちろん土星のネックレス。
すべてがつくしの魅力を引き出させていた。
NOVEL